アドラー心理学において、最終的に目指す場所。つまり、ゴールというものがあります。
それは、「共同体感覚」というものを持つことです。
今回はその「共同体感覚」は一体どういうものかということについて見ていきたいと思います。
共同体感覚とは

と、アドラーは言っています。
では「共同体感覚」というものについて見ていきましょう。
他者を仲間だとみなし、そこに「自分の居場所がある」と感じられることを、『共同体感覚』と言います。
つまり、「承認欲求を満たそうとする」「自己中心的な行動をする」といった「自己への執着」をするのではなく、
「他者への関心」に切り替えて行くことが必要であるということです。
では、『共同体感覚』には重要になってくる3つのキーワードがあります。
次はその3つのキーワードについて見ていきましょう。
自己受容
『自己受容』とは、他者からの評価を気にせず「自分自身はありのままで価値がある」と感じることで、
自分自身の存在を全て受け入れることができるようになることです。
また、その中で「課題の分離」のように「変化させることができるもの」と「変化させることができないもの」に正しく分け、
「変化させることができないもの」は放っておいて、「変化させることができるもの」を変えていこうとする態度が『自己受容』です。
できない自分を責めている限り、永遠に幸せにはなれないだろう。今の自分を認める勇気を持つ者だけが、本当に強い人間になれるのだ。
アルフレッド・アドラー
「自己肯定」ではない
ここで注意しておきたいのが、「自己肯定」ではなく「自己受容」であるということです。
「自己肯定」とは、簡単に言えばいつもポジティブに捉えるということで、
つまり、「テストで0点を取った」としても、「僕はまだ本気を出していないから仕方がない」という風にできてもいないのに自己暗示をかける態度のことです。
しかし、「自己受容」とは、まずは自分を受け入れて、その後どうするかを考えることです。
つまり、「テストで0点を取った」としても、「僕は実力で0点を取ってしまった。それは認めるが、過去はどうしようもないので次に良い点を取れるように勉強しよう」という態度です。
まずは現状の自分を受け入れつつも、「変えられるものを変えていこう」という態度が「自己受容」なので、
「自己肯定」との区別をつけなければいけないということは注意が必要です。
『嫌われる勇気』では「肯定的なあきらめ」という言葉を使って表現しています。
他者信頼
「他者信用」ではなく、「他者信頼」をすることが重要です。
「信用」とは担保があったり、実績、見返り、があるから信じる(過去の出来事)ということであり、
「信頼」とは未来に対して無条件で相手を信じる(未来への期待)ということです。
つまり、「損得勘定」や「Give&Take」という関係性ではなく、無条件で相手を信頼するということです。
なぜなら、「損得勘定」や「Give&Take」の関係性では、「やってくれるからやる」「くれるからあげる」という「思いやり」のある深い関係性を気づくことができないからです。

と、このように考えてしまう人もいるかもしれませんが、
自分の行為に対して、他人がどう感じ、どう行動するかというのは『課題の分離』における『相手の課題』なので、そもそも気にする必要はないのです。
「感謝」が無くても、「見返り」が無くても、他者を信頼するということが共同体感覚には求められます。
他者貢献
最初の方で、共同体感覚とは「承認欲求を満たそうとする」「自己中心的な行動をする」といった「自己への執着」をするのではなく、「他者への関心」に切り替えて行くことが必要であると言いました。
「他者貢献」とはまさにその通りで、「自己中心的な考え」から「他者への貢献」をすることに切り替えていくことです。
もちろん、「他者貢献」は「承認が目的の行為」や「自己犠牲」ではダメです。
自らの「貢献したい」という気持ちによる行為でなければいけません。
貢献感は自己満足
「自分は役立っている」と実感するのに、相手から感謝されることや、ほめられることは不要である。貢献感は「自己満足」でいいのだ。
アルフレッドアドラー
この他者貢献をすることによって得ることができる「貢献感」とは自己満足でいいのです。
それはなぜかというと、「自分が役立っているかどうか」というのに「感謝」や「褒められる」ことを求めてしまうと、
「感謝されないと貢献感を得られない」「褒められないと貢献感を得られない」ということになってしまうからです。
「感謝されるかどうか」「褒めてくれるかどうか」というのは『相手の課題』なので、自分がコントロールすることはできません。
なので、「貢献感」を得るためには自己満足の「他者貢献」で良いのです。
まとめ
「共同体感覚」とは、まとめると、
① 自己受容
②他者信頼
③他者貢献
の3つによって成り立ちます。
まずは「自分は価値のある存在である」と認め、「他者を仲間である」と認め、信頼する。
そして、他者に対して自己満足の貢献をする(見返りを求めない)ということが『共同体感覚』です。
幸福とは貢献感である。つまり他者貢献していくときの我々は、たとえ目に見える貢献でなくとも、「私は誰かの役に立っている」という主観的な感覚を、すなわち「貢献感」を持てればそれでいいのです。
終わりに
「嫌われる勇気を持て」と聞くと、なんだか「誰に嫌われても好きなことをして幸せになれ」という風に聞こえるかもしれませんが、
「嫌われる勇気を持つこと」「課題の分離」「承認欲求を捨てること」はあくまで、他人の人生を生きることをやめ、「自分の人生を歩むための手段」です。
そして、「自分の人生を歩むこと」ができたのならば、次は「幸せになる」ためへの道を歩まなければいけません。
その「幸せになるための手段」が「共同体感覚を持つこと」であり、
「アドラー心理学におけるゴール」なのです。