最近ようやく一部の人にもミニマリスト(minimalist)が浸透し、ミニマリズム(minimalism)の概念も理解されてきたように感じます。

その時代の先駆けであるミニマリストというライフスタイルは海外発祥なのですが、その根本や本質には「侘び寂び」の概念が潜んでいると考えています。
なので、今回は「ミニマリスト」と日本古来の文化である「侘び寂び」についての関連性について紐解いていきたいと思います。
日本古来の文化に触れる
ミニマリズムに通ずる日本古来の『文化』や『美徳』というのは『侘び寂び』です。
日本人の方なら誰でも聞いたことがあるはずです。
わび・さび(侘・寂)は、日本の美意識の1つ。一般的に、質素で静かなものを指す。本来侘(わび)と寂(さび)は別の概念であるが、現代ではひとまとめにされて語られることが多い。
引用 wikipedia
侘(わび、侘びとも)とは、「貧粗・不足のなかに心の充足をみいだそうとする意識」
引用 wikipedia
寂(さび、寂び、然びとも)は、「閑寂さのなかに、奥深いものや豊かなものがおのずと感じられる美しさ」
引用 wikipedia
侘び寂びとはセットで使うことが一般的で、寂しいからこその美しさを「寂び」それを感じる心が「侘び」となります。
深く考察してしまうとややこしくなってしまうので、今回は簡単に説明しておきます。
茶室とミニマリズム
日本でミニマリズムを感じることのできる代表的な文化と言えば、
「茶室」といった『お茶の世界』ではないでしょうか。
お茶の世界では、何もない殺風景な部屋の中に、屏風や生け花が一つだけ飾っていたり、
その他にも、たった一つのお菓子とお茶で世界を表現していたり、
これらには選択と集中と排除によるミニマリズムの世界が見え隠れしています。
お気に入りの一点モノ
ミニマリストとは最小限主義であり、モノに対しての関係性が非常に大きいライフスタイルです。
自分が選んだモノに対してはどれだけ劣化しようと、どれだけ古くなろうと、
共に人生を歩んできたモノとしての美しさや愛着と共に人生を豊かにしていくというのがミニマリストの考えの一つとしてあるのですが、
この考え方には『寂び』の考え方が見え隠れしています。
『寂び』とは、静かで閑寂なものに豊かさや奥深いものを感じることだけでなく、老いて枯れたものを時間の経過による趣のある美と捉えるという意味も含まれています。
時間の経過を遡ることは不可能なので、今あるものや時間の経過によって時間と共に流れてきたものを美しいと感じることが寂びの本質です。
「さび」とは、老いて枯れたものと、豊かで華麗なものという、相反する要素が一つの世界のなかで互いに引き合い、作用しあってその世界を活性化する。そのように活性化されて、動いてやまない心の働きから生ずる、二重構造体の美とされる。
引用 wikipedia
侘び寂びと西洋哲学
今の現代社会では西洋的な価値観が浸透しきっています。
また、経済成長し、消費文化が流入したことで現代人は消費活動に追い回されています。
別に西洋的価値観も消費文化も悪いことではなく、自分が選択した人生に沿って生きればいいのですが、違った価値観も理解した上で選択するというのは大切です。
また、あなたがミニマリストならば、どういうミニマリズムを突き詰めていきたいかということを考える良い機会になるかと思われます。
こちらは侘び寂びと西洋哲学のモダニズム(近代主義、新しいもの好き)の対比です。
モダニズム わびさび
・論理的、合理的 ・直感の世界
・大量生産 ・一点もの
・未来志向 ・即今志向
・テクノロジーを美化 ・自然を美化
・人工素材 ・天然素材
・鋭く正確で一定 ・ソフトで曖昧
・行き届いた管理 ・劣化や消耗を受け入れる
・恒久的 ・あらゆるものに季節感がある出典 IKITOKI
西洋哲学はモダニズムのような変遷をたどってきました。なので、侘び寂びの日本文化とは大きく異なっています。
そして、現代のミニマリストの傾向はこのような感じではないでしょうか?
ミニマリスト
・論理的・合理的
・一点もの
・未来志向
・テクノロジーを美化
・人工素材
・劣化や消耗を受け入れる
・恒久的
侘び寂びの考えを受け入れつつ現代に合わせているという、まさに現代人らしいライフスタイルではないでしょうか。

侘び寂びの出戻り
侘び寂びは一度海外でも「Wabi-Sabi」と言われ、ブームとなり取り上げられるほどでした。
それほど、西洋的価値観とは対極の侘び寂びの考え方は衝撃だったのでしょう。
そして海外にも侘び寂びが伝わった後、海外でミニマリストという侘び寂びを本質としておいたライフスタイルが生まれました。
それが侘び寂びを忘れてしまった現代の日本にミニマリストとして入ってきたのです。
つまり、ただ単に日本から伝わった侘び寂びが現代風になって出戻りしただけの話なのです。
別にミニマリストというライフスタイルが無くても、日本の文化を知っていれば事足りることなんですよね。
スティーブ・ジョブズと日本
生前のジョブズが日本の文化である禅に強烈な影響を受けたことについては有名な話です。影響を受けすぎて、出家しようとしたという話もあります。
また、iphoneのデザインはシンプルで、ミニマルです。
これもシンプルを主とする禅や侘び寂びの文化に影響を受けたが所以のことなのでしょう。
そして、ジョブズにはこういうエピソードもあります。
記者がジョブズにインタビューする時に、スマホケースに入ったiphoneを取り出した際、
「僕は、擦り傷のついたステンレスを美しいと思うけどね。僕たちだって似たようなもんだろう? 僕は来年には五十歳だ。傷だらけのiPodと同じだよ」
という言葉を発したそうです。このようにジョブズはiphoneに傷がつかないようにすることを嫌いました。
これはまさに侘び寂びの考えを理解し、全ては劣化することを理解しているからこそ出てくる発言でしょう。

まとめ
ミニマリストの根底には、日本古来の文化である『侘び寂び』が隠れています。
なので、ミニマリストというライフスタイルを学ぶ上では、海外をみるよりも日本を見た方が多くを得ることができるでしょう。
また、テクノロジーが進歩している中で、『自然』や『モノ』『個性』が、機械的で単一化されたものに変化して行くのは仕方がないことです。
ですが、人工的で行き届いた管理のされた現代では、本来の侘び寂びである、「自然」や「寂び」「季節感」を感じる感性や心というものは失われてきています。
日常の幸福や幸せを感じるといった点ではテクノロジーの中では限界がありますので、
今後、「感性」や「芸術性」といったものが重要になってくるのではないでしょうか?
また、テクノロジーが進化していくと共に、モダニズムに磨きがかかり「新しい体験」や「快楽」でしか幸福を感じることができないようになってしまうかもしれないということに非常に危機感を感じます。
その上、美しいものを美しいと感じる感性や、良いものを良いと感じることのできる感性は身につけておいて、
芸術性のあるものを美しいと感じれたり、今あるものに感受性をフル活用させれる方が豊かに暮らせるのではないでしょうか?
感性とは、五感を使って磨かれるもの。
それは音であったり、光であったり、絵であったり、色であったり、匂いであったり、味であったりもする。五感を使うものにこそ、好きが含まれる。
感性を使うことこそ、丁寧に美しく幸せに暮らす道。— not@内向型ミニマリスト (@minimalman10) 2018年6月19日
なぜなら、幸せとはなるものでは無く感じるものだから。
— not@内向型ミニマリスト (@minimalman10) 2018年6月19日